詩「学校は飯を喰うところ」

卒業間近の四時間目
ブーニャンはゆっくり入ってくる
「何で遅れたんだ」
「関係ねえだろ」
「学校、何しに来てるんだ」
「飯食いによ」
「何言ってるんだ。学校は勉強するところだぞ」

そんなブーニャンを卒業させてはや二年
ブーニャンの言葉の意味を今にして気づく

ブーニャンには
母はない
兄弟もいない
いるのは寝たきりの父と
夏の縁日に買った
金魚三匹だけ・・・・
夜はカップラーメン
朝はパンをかじったりかじらなかったり・・

一年生の動物の授業
「君たち 生きているものと
死んでいるものの違いはなんだろう」
ブーニャンが答えた
「飯を食うか、食わないか」

父の心臓病が思わしくなくなった二年生
家族みんなで電気をつけて
飯を食っている奴らがうらやましい
ブーニャンは静かに泣いた

ブーニャンは中学を出て
すぐに中華料理店に就職したが
もしかしたら
勉強も飯を喰うためということを
はじめから知っていたのかもしれない

私は生徒にいうようにしている
「学校は飯を喰うところ
一人残らずうまい飯を喰いたまえ」